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@パークス法律事務所
ヘディング年1000回以上で脳損傷の恐れ
  昨夜の日経夕刊に興味深い記事が掲載されていました。

ヘディング年1000回以上で脳損傷の恐れ 米研究者が調査結果

 結論は、
「サッカーのヘディングを長期間繰り返すと、記憶力などに影響を及ぼす脳損傷につながる恐れがある」
です。

 研究内容は、
「調査対象者は32人で、平均年齢は30歳8カ月。全員が子供のころからサッカーを続けている。調査対象者をヘディングの頻度に応じて2グループに分け、それぞれの脳の状態を分析したところ、年間約1000〜1500回以上ヘディングする選手の記憶力や注意力などをつかさどる脳の領域に、交通事故などに起因する外傷性脳損傷患者と似た異常が認められたという。」
ということです。

 2つの点で興味深い報告です。

 1つは、ヘディングで意識障害を生じているケースは稀でしょうが、結果として脳の器質的障害が生じているという点です。脳の器質的障害を認めるのに意識障害を不可欠の要件とする理由がないということです。

 もう1つは、ヘディング程度の脳への衝撃であっても繰り返されることにより、脳の器質的障害が生じうるという点です。

 サッカーのヘディングを恐ろしいものと反対側に極端にぶれることがないように、報告の詳細を知りたいものです。
posted by koichi | 09:37 | 軽度外傷性脳損傷 | comments(1) | trackbacks(0) |
石橋医師意見書届く
  2004年に会社の上司に殴打されて頸椎捻挫、外リンパ瘻、右上肢複合性局所疼痛症候群(CRPS)、脳脊髄液減少症と診断をされた被災者の事件を、控訴審になってから(2010年11月)担当しています(2011年4月26日「軽度外傷性脳損傷の被災者の救済」で紹介)。

 一審では、外リンパ瘻も複合性局所疼痛症候群も脳脊髄液減少症が否定されています。確かに、脳脊髄液減少症なのかな??と思える証拠もありました。
 
 被災者の話を伺っていると脳脊髄液減少症というより軽度外傷性脳損傷ではないかと思ったので、私が石橋医師に直接御願いし、昨年12月に診察をしてもらいました。

 石橋医師は、軽度外傷性脳損傷でまちがいないだろうという意見で、眼科、耳鼻科、泌尿器科、リハビリテーション科などの検査を手配してくれました。しかし、検査を担当する医療機関はどこもとても予約が詰まっており、5月末にようやく検査が終了しました。

 控訴審は、あまり当事者に時間をくれないのが通常なので、検査が間に合うか心配をしていましたが、何とか間に合いました。

 控訴審からの受任なので、かなり厚い記録(私たちが集めた医学文献を含めると記録庫1段分(90cm)あります)を読み込み、特に診療録を精査しました。一審の原告・被告双方の主張はいずれも「診断書」ベースでの議論でした。診療録には、被災者の頸椎捻挫、外リンパ瘻、右上肢複合性局所疼痛症候群(CRPS)を裏付ける所見がたくさんあるのに、どうして、診療録を直接検討しなかったのでしょうかね。宝の山を見逃していたのがもったいないと思って、主張を再編成しました。
 
・ 2011年2月2日付控訴理由書(A4で51頁)⇒第1回期日提出
・ 2011年4月13日付第1準備書面(複合性局所疼痛症候群、A4で16頁)
・ 2011年4月12日付第2準備書面(頸椎性神経根症の診断は頸椎捻挫と同義で用いられていること〈加齢性の変性はないこと〉、A4で11頁)
・ 2011年4月18日付第3準備書面(外リンパ瘻、A4で18頁)⇒ここまで第2回期日で提出
 いやー忙しかった。

 一審原告(双方控訴事案)代理人の気合いが入っていることを示しておかないと、裁判所が「検査が終了するまで待てない」などと言いかねないので、検査の結果を待たずに主張できるところは、短期間で主張し尽くしました。

 この過程では、「医師としての姿勢(2)」で言及した大学病院の整形外科准教授にも耳鼻咽喉科
教授にも大変お世話になりました。
 
 石橋医師にも、特に無理を御願いし、6月7日には、意見書を作成して届けていただいたという次第です。

 次回第3回期日は、6月22日ですので、石橋意見書を踏まえた主張を準備するには、そう余裕がないのですが、石橋医師の力作に答えるべく、軽度外傷性脳損傷に関する主張を準備中です。

 軽度外傷性脳損傷の被災者を救済しようという呼びかけに手を挙げてくれたベテラン、中堅、若手の弁護士の総数は36人になりました。
 地域も、福島、栃木、埼玉、東京、神奈川、静岡、大阪に広がっています。

 昨夜は、次号の日本スポーツ法学会年報へ掲載する論文(共同執筆)の打合せで、私を含めた3人の弁護士が集まりました。

 打合せを終えて、スペイン料理店(バル)で、ワインを飲みながら四方山話をしていたのですが、弁護士の一人が、症状がひどい頸椎捻挫の患者さんの事件を担当しているということがわかりました。大体の話を聞くと軽度外傷性脳損傷らしそうだったので、石橋医師の診察を受けることを勧めておきました。

 軽度外傷性脳損傷だということが見過ごされて苦労している患者さんが少なくないだろうなと思っています。本人が軽度外傷性脳損傷の病識に欠けるので、担当する弁護士も、 軽度外傷性脳損傷と認識しないまま、裁判所で苦戦している例も少なくないと思われるので、弁護士側への情報提供も重要だと思った次第です。
posted by koichi | 19:45 | 軽度外傷性脳損傷 | comments(1) | trackbacks(0) |
コーディネートの日々
 軽度外傷性脳損傷の患者さんは本当に大変です。患者さんと打合せをするたびに涙腺の締まりが悪くなってしまいます。

 「どうして仕事ができないのだろうか」、「どうしてこんなに疲れちゃうのだろうか」、「どうしてこんなに少し前のことを覚えていられないのだろうか・・・・」

 周囲の方々、さらには家族であっても、事故による外傷だとは思っていないので、患者さんが「グウタラ」なのだと思い込んでの冷たい視線。御自身も事故による外傷だと考えていないので、自分がどうして以前のように行動できないか理解できないまま???です。というのが典型的な状況でしょうか。

 1〜2年で石橋Drにたどり着けた患者さんは本当に幸運です。自分が事故による障害があることを早期に理解できたのですから。

 私は、1986年の事故の患者さん(21年間事故による障害だと思われていなかった!!)の事件を担当しています。
 
 先日は、20歳代の作業療法士の方の事情も詳細に聞きました。医療従事者で、御自身のことを客観的に把握しておりました。さすがです。さらに、御自身が休職を続けることで、患者や同僚にこれ以上迷惑はかけられないという周囲に対する正確な判断をして、自身の不利益を顧みず、自ら職場を退職までされています。

 本当ならば、事故前の元気な身体に戻してあげたいのですが、これは医療従事者に御願いするしかありません。私たちにはその仕事はできません。私たち法律家のできることは、公正な補償を実現することしかできません。

 ところが、これも大変です。患者側から見ると連戦連敗の東京地裁交通部。事件が集中している東京地裁労働部での対応(これは突破できると思って担当事件の判決期日を待っています)。すでに訴訟が進行している各地裁での一審係属事件。さらには、もう一審判決(全面敗訴ではないにしても相当不十分な判決)を受けた控訴審事件の対応に追われています。フウーー。

 でも、うれしいことも・・・。

 あるメーリングリストを使って「SOS」を送ったところ、意欲ある若手・中堅の弁護士が手を差し伸べてくれています。

 当面は、弁護士を必要としている患者さんと、意欲ある弁護士とのコーディネートの業務です。(^_^)

 これは、これで難しいのです。私が知っている弁護士の数は数百から数千の単位になると思いますが、私が信頼して紹介できる弁護士の数ということになると一つ桁が少なくなります。もしかしたら、減るのは二桁かな?

 間違いがないようなコーディネートしなければ患者さんに迷惑をかけることになるので、複数で担当し、経験もバランスをとって、・・・・・・と、さらには、当初の立ち上げは私自身も入って見守らないとなどいろいろ配慮しながらのスタートです。

 医療面で孤軍奮闘している石橋Drに比べれば、友軍が多いので苦情を言っている場合ではないのですが、組織的対応を考えなければ・・としみじみ感じています。
posted by koichi | 17:24 | 軽度外傷性脳損傷 | comments(0) | trackbacks(0) |
軽度外傷性脳損傷の被災者の救済
 会社で上司に殴られて軽度外傷性脳損傷、外リンパ瘻、CRPSを発症した被災者の控訴審を担当しています。

 当初、脳脊髄液減少症の診断だったのですが、一審判決では、脳脊髄液減少症が否定されている事案です。控訴審になってから新たに代理人に就任した事案で、昨年11月から忙しい思いをしています。

 昨日(4月25日)、第2回口頭弁論期日がありました。東京高裁としては、じっくり腰を据えて審理をするという姿勢なので、なんとか神経学的諸検査が間に合って意見書をだせるところまでいけそうです。

 殴った側は、「一発殴っただけでそんなにひどい症状がでるわけではない」「詐病だと思っている」とはっきり言い切っています。

 私だって、軽度外傷性脳損傷の病態を知らなければ同じようなことを言いかねなかっただろうなと自戒しています。

1985年に捻挫からRSD(CRPS)を発症した小学校教諭の事件:「公災認定と鑑定医-関原小教諭・RSD事件-(労働と医学47号,1993年)」が、最初のRSD判例ですが、この時も、提訴直後の裁判所は軽度外傷性脳損傷と同じような反応だったなという印象です。

 HPでも紹介しましたが、軽度外傷性脳損傷の患者さんを救済するための弁護団を組織するようにとの石橋徹Drからの要請に応えるべく着手し始めました。一定の受任数に至った段階で、正式に弁護団を立ち上げる予定で準備を始めています。
 
posted by koichi | 15:53 | 軽度外傷性脳損傷 | comments(1) | trackbacks(0) |