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プール飛び込み事故はいつ「卒業」できるのか

 スポーツ事故予防、とりわけ、プール飛び込み事故の防止を提言してきた者の一人としては、繰り返されるプール飛び込み事故報道に接するたびに暗い気持ちになる。今は学校での卒業式シーズンだ。だが、いくたび卒業式シーズンを超えれば、プール飛び込み事故は卒業してくれるのか。

 

 昨年の都立墨田工業高校事故については、2016年11月29日に「都立墨田工業高校競泳のスタート授業中の事故後の東京都教育委員会とスポーツ庁の対応は正しいのか」で意見を述べているところである。

 

 今回は、鳥取県で起こった。鳥取県湯梨浜町立小学校での平成28年7月の事故である。各紙で報道されている。「湯梨浜町 プール事故」のキーワードで報道は検索可能なのでURLは紹介しないが、どのような事故が起こったのか、どうして事故は生じたのか、今湯梨浜町と鳥取県は何をしようとしているのか。直接報道で確認して欲しい。

 

 事故の概要は、水深90cmで高さ36cmのスタート台がある、小学校用プールとしてはごく普通のプールで起こっている。小学校6年生女子児童が受傷。特徴的なのは、フラフープの輪を使っていること。
 

 報道では、空中に掲げたのか、水面に浮かべたのか、さらにはその位置−空中に掲げたのであればスタート台からの距離と高さ、水面に浮かべたのであればスタート台からの距離−は当初の報道では不明であったが(このような肝心な部分があいまいな報道機関へのリリースとなっていること自体が、これが重要な点であることを知らないことを示しており、根の深い問題である。)、その後、水面に浮かべていたこと、プール端(スタート台側)からフラフープの輪の中心までが131cmであることが報じられている。
 

 水面にフラフープの輪を浮かべたという事故の発生状況は、福岡市立多々良中学校の事案(「スポーツ障害・事故の法律側面の現状と課題」79頁【日本スポーツ法学会年報2号】1995年、朝日新聞1992年9月11日報道)と基本的に同一である。←いずれも20年以上前だなーーーー。
 

 フラフープの輪を空中に掲げた事故であれば中野区立九中水泳部練習中事故(東京地裁平成13年5月30日判決、判例タイムズ1071号160頁)や広島市水泳大会前の早稲田小学校練習中の事故(広島地判平成9年3月31日、判決判例時報1632号100頁)がある。
 

 競泳のスタート指導で、フラフープの輪が使われる場合があるが、使用者の意図している目的は、第1に入水地点が近すぎる危険性の除去、第2に入水時の抵抗を少なくする、のいずれかである。
 

 泳者がスタート台からのスタートに恐怖心を抱くことで、スタート台を強く蹴り出せないことを是正する目的で使用される。スタート台を強く蹴り出せない場合には、結果として2つのパターンとなる。
 

 一つが、入水時に頭部を下にした姿勢を取ることができないため、一点に入水することができない姿勢となること、いわゆる「腹打ち」と呼ばれる全身同時の入水である。泳者は入水時に水面に衝突する痛みを伴う。もう一つは、結果として、スタート台の近い場所に大きな入水角度で入水する(「腹打ち」にはならないので入水時の痛みはない)ことである。

 

 両者共に、「少しでも早く遠くに到達する」ことを目的とする競泳のスタートとしては正しくなく、かつ、前者は痛みを伴い、後者は到達水深が深くなるため危険を伴う。

 

 本件では、前者の「腹打ち」是正目的と報じられている。

 

 「さじ加減」という言葉がある。最近では「手加減。手ごころ。」という意味で否定的に使われることが多いが、薬は、適正な使い方=「さじ加減」を誤ると、「薬」にならず、身体に悪影響を及ぼす原因となる。これが語源である。

 

 競泳のスタート指導におけるフラフープの輪(湯梨浜町小学校)もデッキブラシの柄(墨田工業高校)も同じである。適正な使用方法であれば、有益な指導につながるが、「さじ加減」を誤り、適正でない使用方法になれば事故の原因になる。これが、都立墨田高等学校の事故の原因であり、湯梨浜町小学校の事故の原因である。

 

 こんな科学的な知見は、二十年以上前から告知しているのに、どうして正しい「さじ加減」ができないのか。「さじ加減」を誤るのか。

 

 答は簡単である。教員に知識を与える側の教員養成機関ないし教育行政側自身が知らないから、教員に正しい知識を提供することができない。

 

 それでは、教員養成機関ないし教育行政側が正しい知識を持つためにはどうするか。文部科学省あるいはスポーツ庁の責務だと思うのだが・・・・・。

posted by koichi | 12:42 | スポーツ | comments(0) | trackbacks(0) |
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