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@パークス法律事務所
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ハリーポッターの骨折とロックハートの治療−事務管理になるのか?

 知人の整形外科医との共著でスポーツ現場での応急措置についての解説を書いていて、善きサマリア人の法について考える機会がありました。


 以下は雑文です。

 

 ハリーポッターシリーズの「秘密の部屋」では、ロックハートが腕を骨折したハリーを治療しようとした時に、ハリーは、ロックハートが正しい治療ができるとは思っていなかったので(話の展開からは私はこう理解しています。)、ロックハートの治療を受けることを拒みました。

 

 しかし、ロックハートは、ハリーが治療を拒んでいるのを無視して、骨折を治そうと呪文をかけましたが、骨折を治すことなく骨を抜き取ってしまいました。

 

 校医のマダム・ポンフリーは「骨折ならあっという間に治せますが、骨を元どおりに生やすとなると…」と怒っていました。

 

 この話が「人間界の日本で起こったできごとだとしたら・・・」と思ったこと。

 

(1) 腕の骨折の治療は、一般的には医療機関を受診して治療をすることを待てない、緊急な応急手当が必要だという事態は多くない。ハリーの骨折も話の中ではこのような緊急性が認められる事情はなかった。
 このような状態は、「緊急事務管理」(民法698条)の「本人の身体、名誉又は財産に対する急迫の危害を免れさせるため」という要件の「急迫の危害を免れさせるため」という要件に欠ける。
 したがって、「緊急事務管理」は成立せず、ロックハートは一般の「事務管理」(民法第697条)の善良なる管理者の注意義務(抽象的な平均人としての注意義務)を負う。←緊急事務管理が成立する場合は、「
悪意又は重大な過失があるのでなければ、これによって生じた損害を賠償する責任を負わない。」とされています。
 ロックハートの呪文間違いが重過失でなくても(呪文間違いが無過失ではないという前提です。ホグワーツ魔法魔術学校の教師ですから重過失が成立するように思います。)、ロックハートは善良なる管理者の注意義務(抽象的な平均人としての注意義務)違反として、不法行為責任を負う。

 

(2) それ以前に、通常の「事務管理」と考えたとしても、「義務なく他人のために事務の管理を始めた者は、その事務の性質に従い、最も本人の利益に適合する方法によって、その事務の管理をしなければならない。」(民法第697条)のであり、「他人のため」という要件が必要であり、本人の意思に反しないことが求められる。

 

 本件では、ハリーは明確にロックハートの治療を拒んでいるので、本人の意思に反した行為を行っているので、そもそも「事務管理」の要件にも欠ける。

 

 事務管理として免責されることはないので、ロックハートの応急手当としての措置が間違っているので不法行為責任(第709条)を負うのは当然であるし、ロックハートが正しい呪文を唱えても(適切な応急措置であっても)、ハリーの自己決定権の侵害として不法行為責任を負う(損害をどう見るかはあるにしても)可能性がある。

 

 これが日本の法律の適用だと思いますが、医療関係者は違和感あるのかな?

 

posted by koichi | 11:15 | 日々雑感 | comments(1) | trackbacks(0) |
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2018/12/20 14:27 by -
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